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産婦人科  田島 朝宇  


はじめに

 今回は無痛分娩の話です。日本においては無痛分娩自体あまり身近に感じられないかもしれませんが、読んでいただき少しでもイメージしていただくことができたら幸いです。なお、当院でも無痛分娩が可能になりました。

 

無痛分娩の歴史

 それではまず無痛分娩の歴史についてからはじめましょう。無痛分娩はいつ頃より行われるようになったのでしょうか。

 出産の痛みは、アダムとイブが禁断の果実を食べたために神から与えられた原罪であり、それを取り除くことは神への冒涜とされた時代もありました。そういった時代的背景の中でも、中世には薬草やアルコールを用いて、出産の痛みを和らげようとさまざまな試みがなされていました。

 1853年、イギリスのヴィクトリア女王がクロロホルム麻酔で出産をしたことをきっかけに英国の教会が無痛分娩を認知し、これをきっかけにしてヨーロッパで無痛分娩が広まりました。1940年代になるとアメリカでは、24時間体制の無痛分娩サービスが開始され、希望者に無痛分娩を行うことはごくあたりまえのこととなっていました。1992年にアメリカ麻酔学会とアメリカ産科婦人科学会は「妊産婦が無痛分娩を要求することは当然の権利である」との共同声明を発表しています。フランスをはじめとする諸外国では産科医療の「集約化」が進んでおり、産科医や小児科医、そして産科専門の麻酔科医が確保されているセンター病院で分娩するのが一般的です。そのため欧米での無痛分娩の普及率は高く、最も普及率の高いフランスでは、実に、妊婦の74%が無痛分娩で出産しています。

 

無痛分娩の概要

 無痛分娩とは、一般的に「硬膜外麻酔による無痛分娩」のことをいいます。背中から細く柔らかい麻酔の管を通してそこから麻酔薬を注入して痛みを軽減させながら行う分娩方法です。

   


 無痛分娩を行えば痛くないのでしょうか。名前は無痛分娩ですが、全くの無痛になるわけではありません。痛みの指標としてVASスコアと呼ばれるものがあります。左端を「痛みなし」、右端を「想像できる最高の痛み」とした長さ10cmの黒い線を患者さんに見せ、現在の痛みの度合いを指し示してもらう方法です。この方法を用いて分娩時の痛みを表してもらうと、自然分娩を行った妊婦さんの痛みの程度は8から10程度、無痛分娩を行った妊婦さんの痛みの程度は1から3程度となり、痛みは半分以下になると考えることできます。

 

無痛分娩の長所

 また痛みが軽減されれば、お産による疲労が少なく、産後の回復が早くなります。赤ちゃんにとってもお母さんの痛みが軽減されることにより赤ちゃんに十分の酸素を届けることができるようになります。妊娠高血圧症候群のような赤ちゃんへの血流が減っているお母さんには無痛分娩はおすすめです。

 日本における多くの無痛分娩は、自然な陣痛を待たずに、日取りをあらかじめ決め、薬で陣痛を起こして計画的に分娩を行います。結果、いつ陣痛が始まるかなど、出産への恐怖やストレスが軽減され、心の準備ができやすく、安心して分娩にのぞむことができます。

 

無痛分娩の短所

 無痛分娩の短所としては、使用する麻酔薬により皮膚のかゆみ、低血圧、体温上昇、頭痛や吐き気などの副作用が出てしまう場合があります。麻酔医が細心の注意をはらって麻酔を行うこととなりますが、副作用が出てしまう可能性は否めません。また、極まれなケースではありますが、硬膜外麻酔が髄液や血管にはいってしまい、麻酔が上半身に広がってしまうことによる呼吸困難や、舌や唇のしびれ、ひきつけなどを起こすことがあります。ただし、すべて適切な対処法は存在しています。その他には、普通分娩の妊婦さんよりも分娩時間が長くなります。ただし、赤ちゃんが元気に産道を降りてきていれば、分娩時間の延長は問題ないと考えられています。

 

最後に

 荒尾市民病院は産科医、小児科医、麻酔科医が確保されており、無痛分娩を行う環境が整っております。また、当院での無痛分娩は安全性を重視した計画分娩で行うことになります。
 以上、説明させていただきましたが、いかがでしょうか、何となくでもわかっていただければ幸いです。疑問に思ったこと、聞きたいことなどありましたら遠慮なくたずねてみてください。