小児科 又吉 由紀子
今年はプール熱が過去10年間の中で最も大きな流行となっています。プール熱(咽頭結膜熱)は、夏場に塩素消毒が十分でないプールで集団発生することがあるためにこの名がついています。アデノウイルス2、3、4、7型(3型が多く、今年も3型が流行)によって起こります。
7型は乳幼児に肺炎を起こします。発熱、咽頭炎、結膜炎が主症状で頭痛、リンパ節腫脹、鼻炎、乳児では嘔吐・下痢といった消化器症状を示すことがあります。
5~7日の潜伏期を経て急激に咽頭痛、目の痛み、39℃の高熱がみられます。眼病変は片側から発症し2~3日で両側性になることが多いです。発熱は 4日前後持続し、咽頭と眼症状は1週間で改善します。
典型的な場合は臨床症状から診断可能です。高熱が持続するので血液検査を行うと、アデノウイルス感染症では時に炎症反応が高度になるため、細菌感染症との鑑別に悩むことがあります(血沈の亢進は軽度)。
抗生物質を飲んでも熱が続きます。確定診断は咽頭ぬぐい液からの迅速検査や、ウイルス分離、採血でウイルス抗体価の上昇をみたりします。ウイルス性疾患なので治療は対症療法になります。
安静の上、十分な水分補給を心がけます。高熱で体力を消耗する場合には冷やしたり、解熱剤の使用をします。喉の痛みから乳幼児では経口摂取ができなくなるために輸液を必要とすることがあります。
眼症状には点眼薬を使います。
夏かぜであまり熱は上がらず、消化器症状や手足口病をおこすエンテロウイルス属の感染症もみられてきています。
途中から高熱となったり激しい頭痛が出現し、頸の後ろが硬くなり痛みを伴うようになると、ウイルス性髄膜炎が疑われます。頭痛・嘔吐のため経口摂取できずきつがるので、髄液検査や点滴をして安静入院が必要になります。
夏かぜの予防の基本は手洗いや消毒です。また暑さで食欲が落ちますが、バランスよく食欲を増すような食事、規則正しい生活を心がけて体調を整えましょう。