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健康づくり

性感染症について

産婦人科 石川 勝康

性感染症(Sexually transmitted disease:STD)は性行為により感染する疾患であり、原因となる微生物は80種類に及ぶと言われていますが、その主たるものは約20種類です。この中で最も感染者が多いのは2000年9月に新たに制定された感染症新法に全数把握疾患とされた梅毒と、定点把握疾患の淋菌感染症、性器クラミジア感染症、性器ヘルペス感染症、尖圭コンジローマの5種類となっています。
STDの流行が社会的要因により影響を受け変化することはありますが、性感染症関連疾患種類は、年々増加傾向にあります。1992年はエイズに対する認識が高まった影響でSTD全体が減少し、特に淋菌感染症が激減しました。しかし、エイズに対する不安や関心が薄れるにつれて、再び増加に転じました。

厚生省の感染センチネル・サーベイランス研究班によると疾患の割合を男女別にみた場合、現在では男性では淋菌とクラミジア感染症がほぼ等しく、それぞれの4 割を占めています。女性ではクラミジア感染症が増え続けて約6割に達し、特に歳以下の若年層の罹患率が高いことが明らかとなってきました。

骨盤内炎症性疾患骨盤内炎症性疾患(Pelvic inflammatory disease :PID)は、子宮頚管より内性器に起こる感染症の総称で、子宮付属器炎や骨盤腹膜炎、子宮内膜炎等を含む、その大部分は腟および子宮頚管から上行性感染が原因です。
 PIDは生殖年齢にある若年婦人に多い感染症で、起因菌としてSTDに関連したクラミジアや、淋菌の増加が注目されています。骨盤腹膜炎は急性期の疾患であり、早期に診断・治療することで多くは速やかに治癒するが、最近増加が懸念されているクラミジア感染症のように、無症状かあるいは症状が軽微なため、治療されないまま放置され、卵管性不妊症にいたる症例も多くなっています。
 性感染症の中ではクラミジア感染症に次いで多い疾患である淋菌感染症の病原体は、グラム陰性双球菌でnaturalはヒトだけです。もっぱら性感染により伝播するため男性では前部尿道粘膜、女性では子宮頚部および尿道粘膜が好発感染部位となり、尿道炎や PID: が主な疾患です。最近は性風俗の多様化により直腸粘膜や口腔粘膜に感染することがあります。治療は抗生剤によって行いますが、近年、抗生剤に対する耐性菌%以上)が問題となっています。

結膜炎の病原体としてしられていたクラミジア・トラコマティスは、子宮頚管炎の原因にもなっていることが明らかになったのは1970年代に入ってからです。淋菌感染症よりも、さらに女性感染者は感染時に無症状であるため治療の機会が無く増え続け、 16~25歳までに100万人を超す感染者があるといわれ、とりわけ85万人とその多くが女性となっています。

子宮頚管炎が初発診断であるが、宿主はまったく感染に気が付かないまま、腹腔内から上腹部まで感染が拡がり、卵管やその周囲に癒着を形成し不妊症の原因となります。また、肝周囲炎は劇症で、救急外来へ若年女性の急性腹症として搬送されることもあります。診断は、子宮頚部から採取した検体を対象とした核酸増幅法がきわめて高感度であり、PCR法であれば~4/assayの検出感度であるが、問題点は下腹部痛など訴があり検査する頃にはすでに頚管にクラミジアは存在せず、役に立たないことがあります。
 治療はいかに劇症の急性腹症であっても、基本的に保存的治療で治癒させ得ますが、セフェム系、ペニシリン系、アミノ配糖体系には全く感受性がなく無効です。

最近は、若い世代に性感染症(Sexually disease:STD)が蔓延しています。初交年齢の低下は著しく、また、性風俗の多様化と共に15歳前後のところまでSTD が蔓延してきています。性感染症を語る前に、性感染症の増加の原因に初交年齢の低下、不十分な性教育の実態が考えられます。
 これは、STDの増加のみならず望まない妊娠の増加、そして結果として人工妊娠中絶の増加となって現われています。熊本県は全国と比較しても人工妊娠中絶の実施率は高く、性感染症の予防も含めて10代への性教育の必要性を痛感させられます。