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手術による治療が可能な痴呆

脳神経外科 不破 功

特発性正常圧水頭症とは

脳の中心部に脳室という部分があります。ここは、脳を潤している水分、すなわち髄液を産生し、貯留するところです。何らかの原因で、この部分に髄液が過剰に貯留する状態を水頭症と言います。

成人では、くも膜下出血や脳内出血などの頭蓋内出血が原因になることが多いのですが、ときに頭蓋内出血などの原因が明確でない場合があります。このような病気は、「特発性正常圧水頭症」と言われております。英語では、idiopathic normal pressure hydrocephalus、略してiNPHと呼ばれております。

中高年に多く見られる疾患であり、アルツハイマー病やパーキンソン病、脳血管障害などとは治療方法が大きく異なることから鑑別が重要です。

外科的治療で症状が改善する痴呆性疾患であり、treatable dementia(治療できる痴呆)とも呼ばれています。歩行障害や痴呆をきたす疾患としては、まだまだ一般医家に十分には知られていない病気であり、今後の周知が必要とされています。

特発性水頭症の症状

歩行障害、尿失禁、知的機能低下が主な症状です。

  1. 歩行障害:徐々に歩く事が不自由になります。第一歩が出にくい、小刻みの歩行、足の挙上ができにくい、足を開かないと不安定になるなどの症状がみられます。
  2. 知的機能低下(認知障害):軽症では、作業能力低下、思考速度の低下、注意力低下、計算能力低下などがみられます。徐々に記憶力低下、物忘れなどで日常生活に支障をきたすようになります。
  3. 尿失禁:尿をがまんできず、いわゆる「お漏らし」が出てきます。また尿の間隔が近くなることもありますが、歩行障害があり、トイレに行くまでに間に合わなくなります。

検査方法

  1. MRI:髄液の貯留状態を調べます。脳萎縮との鑑別が重要です。
  2. 脳槽CT:腰部より針を刺す、いわゆる腰椎穿刺を行って、髄液の中に造影剤を注入します。時間をおって頭部CTを撮影し、造影剤の流れを調べます。
  3. 髄液排除試験:上記(2)と同様に、腰椎穿刺を行い髄液を30ml程排除します。これによって症状が改善すれば、特発性水頭症の可能性が高いものと思われます。

手術方法:脳室腹腔短絡術(髄液シャント手術)

全身麻酔下に、脳室と腹腔を細い管で接続し、脳室に貯留した髄液を腹腔に流出させる手術です。手術時間は約1.5時間です。英語では、ventriculo-peritoneal shun、略してVPshuntと呼ばれます。
方法は下記です。

  1. 頭部に小さな穴を一個開けます(穿頭術)。
  2. この穴から脳室に細い管(脳室管)を入れます。
  3. この細い脳室管と水圧調節用のバルブ(シャントバルブ)を接続します。
  4. 腹部を4cm程切開して、腹腔に細い管(腹腔管)を入れます。
  5. ついで、上記圧調整バルブと腹腔管を接続します。

手術図解

まとめ

高齢者の歩行障害や知的障害は、「どうせ病院に行っても治らない」とあきらめられている事があります。
また、特発性正常圧水頭症は、アルツハイマー病、パーキンソン病、脳血管障害などによる痴呆や歩行障害との鑑別が重要ですので、専門医を受診されることをお薦めします。

参考文献

  1. INPHwebサイト
    http://www.inph.jp/chiryou/chiryou_index.asp
  2. 特発性正常圧水頭症診療ガイドライン:メデイカルレビュー社より出版
  3. 手術で治療できる痴呆
    http://www2.health.ne.jp/library/3000/w3000690.html

【連絡先】

荒尾市立 有明医療センター 脳神経外科 不破 功(ふわ いさお)
TEL[代表]:0968-63-1115 脳神経センター外来