アルツハイマー病の新しい治療薬「レカネマブ」について
荒尾市立有明医療センター 脳神経内科部長 大嶋俊範
レカネマブ (レケンビ®)はどんなお薬ですか?
レカネマブ(レケンビ®)は「アルツハイマー病による軽度認知障害(MCI)」と「アルツハイマー病による軽度の認知症」に対するお薬です。
レカネマブ (レケンビ®) は、アミロイドβと呼ばれるタンパク質を脳内から除去する新しい作用をもったアルツハイマー病の進行を遅らせるための薬剤で、認知機能の低下を緩やかにすることが期待されています。
荒尾市立有明医療センターの脳神経内科(老年内科)では、当院の脳神経外科、有明地区の認知症疾患医療センター(荒尾こころの郷病院)と協力し、この薬剤を安全に投与できる体制を整えました。
レカネマブ(レケンビ®)治療はだれでも受けることができますか?
レカネマブ治療については、厚生労働省から「最適使用推進ガイドライン」が発出されており、確実な診断のもと、安全に投与できる病状や検査結果などを確認し、治療を行うよう定められています。
レカネマブの投与にあたっては、様々な検査や診察を受けていただき、その結果、一定の条件を満たす方のみが対象となり、結果によっては、患者さん自身やご家族が希望されても投与できない場合があります。
まずは、かかりつけの主治医にご相談いただき、当科外来もしくは認知症疾患医療センター(荒尾こころの郷病院)の外来の予約をおとりください。
当院脳神経内科(老年内科)「認知症生活サポート外来」の予約について
当院の「認知症生活サポート外来」は、かかりつけ医からの紹介が必要となります。
診察は、毎週火曜日の午前に行い、初診では、脳神経内科専門医、認知症専門医が診察いたします。
※患者数に応じて、通常の脳神経内科外来での診療も行います。
受診をご希望の患者さんは、まずはかかりつけの主治医にご相談ください。かかりつけのない患者さんについては、認知症サポート医の開業医もしくは認知症疾患医療センターにご相談ください。
かかりつけ医から当院の患者サポート・医療連携室にご予約いただき、診察日を事前に決定いたします。
当院におけるレカネマブ (レケンビ®) 投与の注意点
当院におけるレカネマブ(レケンビ®)治療のおもなポイントとして以下のことが挙げられます。
- 軽度認知障害および軽度の認知症であること
各種の認知機能テストで検査を行います。 - アルツハイマー型認知症以外の原因による可能性がないこと
神経診察や詳細な血液検査、頭部MRI撮影、脳血流SPECT検査などを行います。パーキンソン病関連疾患との区別のため、ドーパミンシンチやMIBG心筋シンチを行うこともあります。
2週間ごとの通院が可能な全身状態かを確認するため、栄養状態や筋肉の量、心機能なども必要に応じてチェックを行います。 - アミロイドβの脳内蓄積を示唆する所見を認めること
1・2の要件を満たした方は、アミロイドPET-CT検査(他院紹介による)や腰椎穿刺(当院)により、アミロイドβの脳内蓄積のチェックを行います。 - レカネマブ (レケンビ®) 投与による副作用の危険性が高い脳異常がないこと
1・2・3の要件を満たした方は、レカネマブ (レケンビ®) による特有の副作用の危険性を確認するため、特殊な撮像法で頭部MRIを施行いたします。
注意事項
- 治療の対象となる認知機能検査の点数の目安のひとつは、MMSEで22点以上です。あらかじめかかりつけ主治医でこの点を確認していただくことで、よりスムーズに検査が進みます。ご協力をお願いいたします。
- レカネマブ (レケンビ®) による治療は、2週間ごとの点滴注射となります。18ヶ月間にわたり、通院による治療と数ヶ月毎の評価を継続いたします。
投与開始からの少なくとも6ヶ月間は、当院で治療を行い、その後の12ヶ月は認知症疾患医療センターの荒尾こころの郷病院もしくは施設要件を満たす他の医療機関に治療の継続を依頼いたしますがご了承ください。(その間の定期的な検査は、当院で行います。)