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健康づくり

まむし咬症について

外科 工藤 啓介

マムシは荒尾周辺にも多く生息しており、咬傷事故が少なくありません。
毎年6~7月の田植えの時期や草刈の時期、9~10月の稲刈りの時期におこることが多いようです。
マムシ

マムシはクサリヘビ科に属しその毒はハブよりも強力であるといわれています。しかし、マムシはハブに比べて小型であるために注入される毒素が少なく、結果としてはハブより軽症であることが多いようです。

診断上重要なことは、咬んだヘビがマムシかどうかという点です。マムシは小型の蛇でせいぜい60cm以下です。胴体は太く、頭は三角形で、黒褐色の銭形の斑点が背中にみられます。ヘビを持参してもらえば判断は容易ですが、ほとんどの場合、蛇はすぐに逃げてしまいますので判断できない場合も少なくありません。

ヘビ毒が注入されたか否かについての判断は、咬まれた傷あと、症状(痛み、腫張)、全身状態などから判断せざるを得ません。2本の平行する鋭利な歯の傷を認める場合はマムシ咬傷を強く疑います。痛みや腫れなどの局所の症状は重要です。通常約30分以内に出現し、これがなければ、無毒か毒量が少なかったかのいずれかであろうと考えられます。特徴としては咬傷直後の電撃性の痛みと、比較的速やかに発生して中枢側(指であればつけ根の方向)へ進展する局所の腫脹がみられます。

ヘビ毒が体内に拡がることを防ぐことが最も重要です。局所を安静に保ち、咬まれた部位から一関節中枢側の駆血(しばる)を行うのが最も効果的です。しばりながら速やかに救急病院を受診してください。

ヘビ毒を体内より排出する必要があります。病院では、まず局所を切開します。局所麻下に皮膚に浅い切開を多数入れて出血させることにより毒素を排出させます。注入されたヘビ毒は一定時間局所にとどまるために、表層の毒素は吸引によりある程度排除されます。よって受傷後短時間に吸引を行うことが大切です。

次に、薬剤を投与してヘビ毒を中和します。以前はマムシ抗毒素血清が多く使用されていましたが、この血清は時に過敏症をきたしかえってショック状態になることがあります。特に過去に抗毒素血清の投与を受けたことのある方は過敏症の危険性が高いと思われますので、最近では、あまり使用されないようです。
当院では過敏症の心配がないことから抗毒素血清の代わりにセファランチンという薬剤を多く使用しております。セファランチンとは、台湾の高地に住む原住民がマムシ咬症の民間療法として使用していた台湾産のムラサキツズラフジから抽出された薬剤です。マムシ毒素に対して中和作用があるとされています。
マムシ咬症は重症化すればショック状態となり、死に至ることもありますので、迅速な治療と十分な観察が必要です。当院では、原則として数日の入院をおすすめしております。もしマムシに咬まれたと思った時には、遠慮なく救急外来を受診されて下さい。